Category Archives: books

アンビエント・ファインダビリティ

アンビエント・ファインダビリティ―ウェブ、検索、そしてコミュニケーションをめぐる旅 : Peter Morville, 浅野 紀予 われわれは、ユーザビリティをマーケティングに対抗させてしまうようなゼロサムゲームに陥ってはならないのである。(本書、p142) 書名の「アンビエント・ファインダビリティ」は、情報の見つけやすさ、発見容易性とでもいうのかな。言葉がわかりにくいという話は置いておいて、内容は非常に濃いものだと思う。最初に断っておくが、情報を意図的(効果的)に目立たせるという、いわゆる SEO 的な視点ではない。もっと広い視野でみている。 情報社会という言葉は当然のごとく普及し、情報は洪水を超えて、情報の海の中に漂っていると言っても過言ではないと思う。この大海原で、本当に重要な情報をいかにして確保するか。既存の情報の重要度(PageRank™)判定を Google だけに任せていてはだめだという危機感もある。 本書の序章はこんな下りで始まる。 あなたはどうやってここにたどり着いたのか?(中略) つまり、あなたはどうやってこの本を見つけたのだろうか? (中略) 私がこんなことを尋ねる理由は、この本を誰かが見つける可能性というものが、実はゼロに近いほど小さいからなのだ。 現在、世界中に存在する書籍は7500万から1億7500万タイトルにのぼると推定されている。それに加えて、何百万ものブログ、何十億ページもあるウェブ、数え切れないくらいのテレビやラジオの番組、RSSフィード、Podcastなどの情報源が存在し、それらは今この瞬間も増殖し続けているのだ。 こんな情報の大海の中でこの1冊の本を見つける確率は、宝くじに当たるより低いといえるだろう。 そう、ただ流れてくる情報を受け取っていれば OK という時代は過ぎ去った。 ウェブ制作者としては、ユーザの情報リテラシの問題もあれば、ウェブサイトをどう設計するかという「情報アーキテクチャ」の視点も必要、そしてセマンティックウェブの話題にも及ぶ。これらの問題をいかに冷静に見つめるか。 この本を読んで浮かんできたのは、どんな情報にありつくときでも、「自分にとって関心がある」という重要なファクター。ポータルサイトのトップページにあった情報であっても、自分にとって関心がなければ、通り過ぎてしまう情報でしかない。ニュースサイトの記事だって、記事のタイトルが興味を引かなければ結局は読まずに過ごしてしまう(ここで、一般の紙の新聞であれば、「一覧性」があって興味の引かないタイトルであっても、内容に目がいくという違いがある)。もちろん、その情報に関心を持った人に、その情報を提示することがどれだけ重要なことかはいうまでもありませんが。 大局的に物事をとらえたいという欲求があるのであれば、是非この本を読んでみてもらいたい。 どんなに有益な情報がネットワーク上に存在していたとしても、ユーザが見つけることができなければ、何の意味もありません。その「見つけやすさ」を表す新しい考え方が「ファインダビリティ」です。また、「アンビエント」はブライアン・イーノの「アンビエント・ミュージック」に触発された言葉で、無線ネット接続、モバイル機器、GPS、RFIDなどの技術によって可能になった、いつでも、どこでも、誰でも(モノであっても)、ネットワークに接続可能な世界を表しています。本書は情報アーキテクチャの第一人者である著者が、「見つけること」に関する技術の歴史、情報に関する先人の研究、ネット上の新しい動き(ロングテール、タギングなど)、自身の個人的な体験をもとに、「ファインダビリティ」とは何か、ネットワークが「アンビエント」になりつつある世界で、われわれはどこへ向かっているのか、を考察する意欲的な書籍です。ウェブの制作、ビジネスに関わる方に新しい視点を提供します。